島のおばあちゃんたちが支える 粟島だけのアート活動 余韻ラジオ

2010年に始まった島のアート施設「粟島芸術家村」で島民ボランティアをつとめる"えっちゃん"こと松田悦子さんは、国内外のアーティストや観光客とあたたかい交流を続けてきました。
粟島芸術家村では、アーティストが半年近く島に滞在し、島の人と一緒に作品を作り上げます。初めはアート初心者だった島の人たちも、作品制作をサポートするうちにこの活動が生きがいになり、今では島の人たちによる刺繍作品やお土産が名物となるほど。世代や地域を超えどのようにつながりが続いてきたのか、どんな思いで島外の人を迎えているのか、粟島ならではのあたたかさの理由を教えてもらいました。お話に登場したスポットは、しまれびマップの黄色いピンをご覧ください。

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    島暮らしのアナウンサー

    まな

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    粟島在住

    松田 悦子さん

また帰ってきたくなる、ふるさとのような場所。

粟島芸術家村を拠点に始まった粟島のアート。

「粟島で滞在制作をして、作品が完成したらみんな自分の住むところへ戻るでしょ。でも、粟島芸術家村っていう場所があるおかげでまた帰ってきてくれるんよ。それがやっぱりうれしいわな」
そう話すのは、“えっちゃん”の愛称で親しまれている、島民の松田悦子さん。休校した中学校の校舎を活用したアート施設「粟島芸術家村」の島民ボランティアとして、アーティストやお客さんとあたたかい交流を続けてきました。自らも船の浮き(ブイ)でたくさんのオブジェを作ったり絵本を制作したりしています。

粟島芸術家村は、休校となった粟島中学校の校舎を活用したアート施設。2010年に香川県の事業としてアーティストインレジデンスの取り組みが始まり、若手アーティストが数ヶ月間粟島に滞在し、島の人たちと協力しながら作品制作に打ち込みます。2014年には、瀬戸内国際芸術祭の展示で粟島にゆかりのあった東京藝術大学の日比野克彦さんを総合ディレクターに迎え、三豊市が独自に継続。毎年のように国内外のアーティストを招いてきました。

「この活動が始まった当初は、島の人たちは誰もアートなんてわからないでしょ。ワークショップを開いても、一体何をするのかわからないから、誰も来てくれなかったんです。みんなで作品制作のお手伝いをするんだよ、絵は描けなくても大丈夫だよと根気強く説明してくれて、そうしたらだんだんわかってくれる人が増えて、ワークショップにも参加してくれるようになりました」

アートから生まれた、刺繍のお土産。

アート初心者だった島の人たちも、作品制作を手伝ううちにみるみると秘めたる才能が開花。過去に粟島で滞在制作をしたアーティスト、大小島真木さんとインド人の少数民族・ワルリ族出身のマユール・ワイエダさんの作品制作では、クジラの心臓や魚の群れのモチーフを島のお母さんたちが何カ月もかけて刺繍しました。その繊細で緻密な表現力は、アーティストもお客さんも驚くほどです。
「刺繍を手伝ったおばあちゃんたちも、誇りに思っていますよ。やっぱり自分が作ったものがこうやって残るのはうれしいでしょう。」

そんな刺繍の腕を生かして島の女性たちが作り続けているのが、粟島芸術家村のお土産「刺繍サコッシュ」。マユール・ワイエダさんの作品をモチーフに、一つひとつ島のお母さんたちが手作りした、世界に一つだけのお土産です。毎週土曜日の午後に粟島芸術家村に集まって、ボランティアで制作しています。
「この刺繍サコッシュの売上は、芸術家村の維持管理にあてています。だから販売することも大切な目的なんですが、それ以上に、島のおばあちゃんたちが集まっておしゃべりする場ができたことが大きいですね。日中、とくに用事がなければ家にこもってしまいがちですが、刺繍サコッシュを作るという目的ができたことで、家から出てきて集まって、思い思いにおしゃべりをしながら作業ができる。これがとても重要なんです」

アーティストの思いをたくさんの人に伝えたい。

たくさんの人が粟島を訪れ、島の人とアーティストやお客さんの関わりが生まれたのも、粟島芸術家村という拠点があったから。
「アーティストさんたちにとって、ここが“帰ってくる場所”であり続けたらいいなと思います。2010年に粟島芸術家村ができて長くなりますが、最近は若いボランティアの方や島好きの方が通ってくれるようにもなって、今ちょうど若い世代に引き継がれているところだなと感じます」

2025年は、2人のアーティストが芸術家村に滞在して制作。瀬戸内国際芸術祭2025 秋会期で公開し、たくさんの観光客が訪れました。

島の人が持ち寄った島の植物や野菜が作品の材料に。

「夏の暑い時期に制作していたから、やっぱり体調には気を使いましたね。お手伝いしてくれるおばあちゃんたちも、どんどんやってほしいけど頑張りすぎて体調を崩したらいけないから、その見極めが難しかったです。結果的に、誰一人体調を崩すことなく作品が完成して安心しました。私たちはアーティストと長い時間を一緒に過ごすから、人となりもわかるし、作品に込めた思いも知っています。だからお客さんに、『この作家さんはこんな人でね、こういう思いでこの作品を作ったんよ』って伝えてあげたいですね。彼らのメッセージを少しでも伝えたいし、お客さんには、作品を通して粟島のいいところをいっぱい見てもらえたらなと思います」

植物や野菜から抽出した顔料で島の人が絵を描いた。

粟島芸術家村は、瀬戸内国際芸術祭の期間外でも、毎週土曜日の午後に開館。洞窟とクジラの作品(常設展示「言葉としての洞窟壁画と、鯨が酸素に生まれ変わる物語」)の鑑賞のほか、刺繡サコッシュを購入したり、制作する島のお母さんたちとお喋りしたりと島時間を楽しめます。アーティストと島の人、ボランティアたちが日々を共にしたからこそ生まれる、粟島ならではのあたたかいアートに触れてみてください。

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