瀬戸大橋の間近で過ごす島時間――歴史と自然を未来につなぐ。 余韻ラジオ
迫力ある瀬戸大橋のすぐ近くに位置し、豊かな自然や歴史の風格が息づく本島。ここで生まれ育った冨木田誠さんが、地域のまとめ役として長年島と向き合う中で気づいたのは、変化しながらも決して揺らがない島時間そのものの魅力でした。かつては2000人ほどが暮らした本島も過疎高齢化が進んでいますが、島に思いを寄せる島内外の人が力を合わせ、空き家の再活用など新たな風が吹き始めています。先輩たちが守ってきた島の景色が教えてくれた、本島らしい“非日常”な魅力とは。島のこれまでとこれからについて、思いを聞きました。 お話に登場したスポットはしまれびマップの黄色いピンからご覧ください。
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島暮らしのアナウンサー
まな


島暮らしのアナウンサー
まな
横浜出身。学生時代に訪れた瀬戸内国際芸術祭をきっかけに島に惚れこみ香川に移住・瀬戸内海放送に入社し、島のアート・伝統文化・生活など幅広く取材。2024年春から念願のプチ島暮らしを開始。
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本島在住
冨木田 誠さん


本島在住
冨木田 誠さん
本島生まれ、本島育ち。地域のコミュニティや瀬戸内国際芸術祭本島会場をまとめる存在で、島の人と島外の人の橋渡し役も担う。継続的に島に関わる人を増やし、島の魅力を後世につないでいきたいという思いから、島内外の人たちと協力して関係人口の創出や空き家を改修した交流拠点作りなどに力を入れながら島の未来を考えている。 インタビューはこちら
生まれ育った本島が教えてくれた、島だからこそ感じられる“非日常”の魅力。
「本島の魅力は、島へ渡る船に乗った瞬間から始まっているんです。香川県の丸亀港や岡山県の児島港から約30分、その道中がすでに特別な体験。船から見える光景が、まず素晴らしいんですよ」
お話を聞いたのは、本島で生まれ育ち、島の人と島外の人との橋渡し役も担う冨木田誠(ふきた まこと)さんです。島を訪れた人にまず感じてほしい魅力が、本島ならではの景色だと話します。
「航路のすぐ真横に、どーんと瀬戸大橋が見えるんです。船に乗ると、片側には、日本が誇る技術の結晶である巨大な橋。もう片側には、昔から変わらないのどかな島の風景が広がっている。新旧の景色を船の両サイドで見比べながら島に行けるというのは珍しいんじゃないでしょうか。この対比が、本島ならではの面白さの始まりだと思います」
岡山県と香川県のちょうど中間に位置する本島は、見る場所によってその表情を変えます。船が着く港からは丸亀城や飯野山(いいのやま)といった香川県側の景色が、一方で島の北側に位置する笠島(かさしま)地区周辺からは鷲羽山(わしゅうざん)など岡山県側の風景を望むことができ、島に降り立ってからもさまざまな景色を楽しめます。
アートやグルメ、レジャーなどが楽しめ、瀬戸内国際芸術祭の会場にも選ばれていることから観光客に人気の本島は、約230人(2025年10月時点)が暮らしています。冨木田さんが幼い頃は、どんな景色が広がっていたのでしょうか。
「そりゃあもう、人口は今の比じゃないですよ。最盛期は2000人近くおったんじゃないかな。私が子どもの頃でも、まだ1700人くらいはいたと思います。島中が人でにぎわっていて、どこに行っても活気がありましたね。昔は島のあちこちに商店があって、子どもたちの声が響いていました。今ではもう誰も行かないような半島の先の段々畑まで、きれいに耕されていましたから。島の人たちが隅々まで手を入れて、島全体が生きとったんですね」
島内に数多く残る神社やお寺も、それらを維持できるだけ多くの人々が住み、暮らしが栄えていた証。しかし、時代の流れとともに島の姿は変わったといいます。
「本島が瀬戸内国際芸術祭の受け入れを始めた2013年頃と比べても、人口はもう半分以下。農業をやる人もほとんどいなくなってしまいました。寂しいことですが、これが現実でもあります」
人口が減り、地域の清掃や草刈りといった共同作業も難しくなってきた今、冨木田さんは新たな関わり方の必要性を感じています。瀬戸内国際芸術祭の準備期間などは多くの人が島を整備するために訪れてくれますが、大切なのはその関係をつないでいくことだといいます。
「芸術祭の期間だけじゃなく、いかに継続的に島外の方と関わっていけるかが大事だと思っています。一過性のイベントで終わらせるんじゃなくて、島を訪れてくれた方々と一緒に、この島を良くしていくような活動ができないかと。そういうつながりを作っていきたいです」
定期船が発着する本島港周辺。イベント開催時などは多くの観光客でにぎわう。
そんな思いは、少しずつ形になり始めています。
「最近、空き家を改修した交流施設やカフェなんかができて、若い人たちが頑張ってくれとるんです。たとえば港近くの泊(とまり)地区は、昔は海水浴場として賑わったきれいな浜が今も残っている。そういった場所を拠点のひとつにして、島の人と外から来る人が自然に交流できる場所が増えていくと、島に新しい風が吹くんじゃないかと期待しています」
空き家を改修した料理店では、島の漁師一家が作る旬のメニューを提供。
島と向き合い続ける中で、自身の考え方にも変化が生まれたという冨木田さん。若い頃は観光やレジャーで人を呼び込むことを強く意識していましたが、年齢を重ねるにつれて、本島が持つ本質的な価値に気づいたといいます。
「やっぱりこの島の魅力は、静かなところ。都会の普段の生活とはまったく違う、ゆったりとした時間が流れる島の風景。これこそが魅力なんだと、最近は特にそう思います。便利さとはちょっと違う価値観ですよね」
泊海水浴場周辺
本島は、古くは豊臣秀吉の時代、卓越した造船・操船技術を誇る船乗り「塩飽水軍」が活躍し、自治を許された島。その造船技術を生かし、のちに宮大工や家大工として様々な建築を手掛けた彼らの功績は、島の北側の「笠島まち並保存地区」など島の随所に残されています。海や緑の豊かさも、奥深い歴史も……訪れた人に感じてほしい魅力はまだまだあるといいます。
「例えば伝統的な街並みなどは、何でもかんでも便利にすればいいってもんじゃない。魅力を生かすためには昔ながらの風情を残すことが大事なんだと思います。むしろ、少し不便なくらいがちょうどいいんじゃないかなと。わざと『ちょっと不便だな』と感じる部分を残しておくことで、かえってこの島の良さが際立つ。最近は、そんなふうに考えるようになりました」
笠島まち並保存地区
そんな“非日常”を感じられるものについておすすめを尋ねると、迷わず「風景」という答えが返ってきました。その中でも格別なのが、島から見る夕日。島の西側の福田地区の海辺や、北側の屋釜海水浴場の海岸などがおすすめの夕日スポットだそうです。
「島に夕方遅くまでおるか、宿泊された方しか見られない景色だなと。本当にきれいな風景なんですよ。季節によって、夏は岡山県側、冬は高見島側と夕日が沈む場所が変わるんです。さらに翌朝早く起きていただければ、瀬戸大橋のところから日が昇ってきますよ。日の出は橋から昇り、日没時は島々の中へ太陽が落ちていく……そういう風景は、やはり一泊過ごしていただいた方だけが見られるものだなと。ぜひ泊まってみてください」
自然の豊かさや歴史の風格に触れることができる、本島ならではの島時間。いつ訪れても、頼もしい島の人たちと豊かな島の景色が出迎えてくれるはずです。
お話に登場したスポットはしまれびマップからご覧ください。
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